2012年08月29日
クネンボ 03_歌に詠まれた果実
九年母は、昔からたくさんの歌に詠まれた果実。俳句の季語にもなっています。
万葉の時代、九年母は「阿部橘」と呼ばれていました。
万葉集には九年母の木に寄せて愛しい人への想いを綴った恋歌が残っています。
「吾妹子(わぎもこ)に 逢はず久しも 甘美物(うましもの)
阿倍橘の 蘿生す(こけむす)までに」 詠み人知らず
意味: あの人に逢わなくなって久しい。九年母の木がいつの間にか苔が生えるほどに。
沖縄では、絶世の美女として知られる「志慶真乙樽」の歌が有名です。
今帰仁城の王様に見初められ側室になったものの、なかなか世継ぎができず
毎日祈願をして、ようやく男児を授かった話をもとにした歌です。
♪今帰仁の城(ナキジンヌグシク) 霜成りの九年母(シムナイヌクニブ)
志慶真乙樽が(シゲマウトゥダルガ) ぬきやいはきやい(ヌチャイハチャイ)
九年かかって実がなる九年母と、時間をかけ子を授かった乙樽の姿を重ねています。
今帰仁城には、この歌の碑と共に、
今では沖縄に数本しかない貴重な九年母の木が残されており、
一般の人も見ることができます。
他にも子守歌♪『九年母木節』にも歌われ、
九年母は生活の中で身近な存在の果実だったことがわかります。
※NHKアーカイブ「ちゅらうた大全/沖縄音楽大全」で
クネンボにまつわる下記の歌を聴くことができます。
♪『九年母玉(きぬぶだま)』中村カマド ほか富着の婦人たちhttp://www.nhk.or.jp/churauta/database/data/490.html
♪『西銘の九年母(にしぃみぬふにりゃ)』宮古島平良/前里カマドメガhttp://www.nhk.or.jp/churauta/database/data/700.html
※画像は「草木奇品家雅見」より引用
九年母(クネンボ、クニブ)
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和名:香橘(コウキツ)・橘
学名:Citrus nobilis Lour. var. kunep Tanaka
科:ミカン科ミカン属
生息地:日本各地で、数本ずつ確認されている。
開花時期:5月~。
常緑低木。葉の脇に花径2~4センチくらいの香りの高い白い花をつける。
秋、黄橙色の甘い実を結ぶ。果皮は厚く、種子が多い。
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出典:
◎「草木奇品家雅見」増田繁亭
◎「万葉の植物」岡田憲佳(保育社)
◎今帰仁城
http://www.geocities.jp/djptd603/nakizin-bunken.htm
◎たるーの島唄まじめな研究
http://taru.ti-da.net/e2441914.html
◎NHK「ちゅらうたWEB」
http://www.nhk.or.jp/churauta/
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Posted by puremcolumn at 17:22│Comments(0)
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